ぽろろんぱーぶろぐ:読書録
2022-04-15T12:22:52+09:00
pororompa
歌を作る元小学校教師pororompaが、その日聴いた音楽(主にジャズ)・歌の創作・サッカー・教育・猫など、気の向くままに語るブログです。 コメント歓迎。
Excite Blog
アーサー・ビナード 「知らなかった、ぼくらの戦争」
http://pororompa.exblog.jp/29918701/
2022-04-15T12:22:00+09:00
2022-04-15T12:22:52+09:00
2022-04-15T12:22:52+09:00
pororompa
読書録
アーサー・ビナードは、見つけたら基本全部読むようにしている。図書館から一緒に借りてきた村上春樹のエッセイはなかなか進まなかったが、返す日も近づいてきたので途中でやめてこっちにしたら、あっという間に読んでしまった。
なぜこちらが後回しになったかというと、やはり戦争の話題は読むのもつらいところがある。日々溢れるウクライナのニュースだって見るのはつらい。
アーサー・ビナードも戦争を観念で語るのではなく、生き残った人々を訪ねて歴史の証言を掘り返す。当然その詳細は悲惨なものとなる。そこはしかしアーサー・ビナードも、暗い絶望的な読後感にならず未来への明るい光を感じさせるようにうまく書いている。淡々と語るその語り口からは抑えた怒りが伝わるけれど、同時に彼の人間性と進んで行くべき方向性も伝わる。
もう一つ重要なことは、日本人とアメリカ人の複合的な視点から見ていることだ。平和を語る人は多くいても両者の視点から語れる人は少ない。英語を母国語としながら日本語を自在に扱い日本語詩人でもあるという、彼でしかできない仕事はまだまだあると思う。]]>
ドナルド・キーンの東京下町日記
http://pororompa.exblog.jp/29865014/
2022-03-12T15:34:00+09:00
2022-03-12T15:36:56+09:00
2022-03-12T15:34:00+09:00
pororompa
読書録
ドナルド・キーンの晩年のエッセー集。彼は、二つの大切なことを繰り返し語りかけながらこの世を去っている。
一つは平和の大切さだ。憲法9条は絶対変えるべきではないと、彼は何度も繰り返している。もう少しだけ生き延びていれば、今のウクライナ侵略にも必ず反戦の声を挙げていただろう。米兵として悲惨な沖縄戦やアッツ島の玉砕に立ち合った彼は、芯から戦争の暴力を憎んでいる。軍拡競争に走りたがる好戦的な政治家や短絡的な風潮を警戒する。文学者としての三島由紀夫を評価しているが、決してその思想に共鳴しているわけではないのだった。
そしてもう一つ彼が繰り返し心配していたことは、人文社会科学の軽視の風潮だ。大学では実学ばかりが優先され、文化芸術関係の学問が軽視されてきている。小中学校教育まで文学軽視の波が押し寄せている。これが日本文化の危機を招く危険な風潮であることを彼は繰り返し鋭く指摘する。「人間社会に必要不可欠な品位や品格は教養によって養われる」と彼は書いている。
日記は死の直前まで綴られている。それなのに暗さを感じさせないことに改めて驚く。それどころか未来への力強い提言と、明るさ、温もりに満ちていた。]]>
ニール・ヤング回想 著:ニール・ヤング 訳: 清水由貴子
http://pororompa.exblog.jp/28293427/
2019-05-09T21:14:00+09:00
2019-09-07T23:23:44+09:00
2019-05-09T21:14:10+09:00
pororompa
読書録
引退生活で読書も増えると思うので、これからは読んだ本についても、前よりも意識的に書き残していこうと思う。
「ニール・ヤング 回想」と題されたこの本は分厚い本で、値段も5000円以上もする。旅先で見かけたが、重すぎたので、家に帰ってから注文した。確か以前にニールは自伝を書いていたはずだが、その後のことでも書いたのだろうと思っていた。そう思わせるような帯とか装丁だった。
ところが開けてびっくり、これは車をめぐる回想記である。驚いてもう一度表紙をしげしげと眺めた。一番上に小さい文字で「A MEMOIR OF LIFE & CARS」と書いてあるが、内容を正しく表しているのはそれくらいである。題は単に「回想」としてあるだけで、車だとかいう売込みは一切ない。帯には「自らの音楽人生」「音楽ファン必携の書」などと書き立て、いかにもミュージシャンの音楽的自伝であるかのように装っている。売れると思って、意図的にそうしたのだろう。こういう騙すような商売の仕方は感心しない。
ただ、内容は大変面白かった。この人は父親が文筆家だというが、物書きの才能のある人だとは知らなかった。古い車のコレクターだということも初めて知った。かなり気合の入った執筆態度で、これまで集めた車を自分自身の丁寧なイラスト入りで載せているほどだ。車にはほとんど興味はないが、語り口が面白く、訳もスムーズでぐんぐん惹き込まれた。
それにミュージシャンだから音楽的な話もないわけではない。特に前半は音楽活動への言及も多くて、そのころの作品をかけながら楽しく読んだ。曲を作る合間に読んだが、時間的にはマイナスでも、創作意欲は搔き立てられるのでプラスだった。何にもない日常から何かを創り出すには、刺激が必要だ。
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スピッツ 「旅の途中」
http://pororompa.exblog.jp/7039161/
2008-01-03T16:56:00+09:00
2008-01-03T20:44:09+09:00
2008-01-03T16:56:35+09:00
pororompa
読書的休日
新年明けましておめでとうございます。当ブログを読んでいただきありがとうございます。
今年も、去年並みのペースで書いていこうと思っています。コメントも大いに歓迎です。
よろしくお願いします。
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幹事役となっていた中学の同窓会も無事盛会に終わり、家に帰ってきたところである。ようやく何かほっとした気分になっている。
帰省している息子が持って帰ってきていたのがこの本。スピッツのメンバーが、出会いから今までを回想するという形式になっている。面白い。興味深い。一気に読んでしまった。
文体が揃っているので、おそらくメンバーの口述を然るべきライターがまとめたものだろう。この文体を不自然に思ったり、野暮ったく感じたりするファンもいるかもしれないが、読みやすくてよいとぼくは思う。
内容は、地味とも言えるもので、ポップスターの浮ついたイメージはない。出会いの頃の瑞々しい感動、売れなかった時代の葛藤、変質させられないための抵抗と、やむを得ない妥協、売れてしまってからの悩み、演奏技術に対する不安と自信、音へのこだわりなどが、それぞれの口から語られていく。
結局彼らが共通して語っているのは、「共に演奏する楽しさ」である。ビジネスであってもビジネスになりきれない、不器用とも言えるほど純真な心を持ちながら、演奏する快感を共に感じて20年走り続けてきたことがよく分かる。そのナイーブさこそがこのバンドの持ち味である。
スタッフに70年代フォークの香りを感じると言われて、草野がエンケンや友部正人などのURC作品を聴いてみるくだりがあるが、なるほど、音はロックでも精神としてはそれに近いものがある。また、作詞のヒントを得るために大正ダダイズムの詩なども読んだという話も興味深かった。
それぞれのアルバム制作時の苦労話も面白い。特に、プロデューサーがどんな関わり方をしていたかが詳しく語られて、読みながらそれぞれのアルバムを聴き直してみたくなった。作品をより深く味わいたい人のための、ライナーノート代わりにもなる。スピッツのファンならCDの隣に置いておきたい本だ。]]>
村上“ポンタ”秀一 「自暴自伝」
http://pororompa.exblog.jp/4819997/
2006-12-30T22:39:00+09:00
2007-01-08T13:33:44+09:00
2006-12-30T22:39:28+09:00
pororompa
読書的休日
読めば読むほどイヤな男である。でも読めば読むほど面白い。ドラマー、ポンタ村上の自伝を一気に読んだ。ちょうどぼくが親しんできた時代と重なるミュージック・シーンの裏話は、どれも面白く、興味深いエピソードが満載だ。
でも読みながら不思議に思った。これだけ活躍していて、この人のプレイについてまるで印象がない。1万枚を超える録音をした、日本一売れっ子のスタジオ・ミュージシャンで、あらゆるジャンルで叩いてきたというが、はて?どんなプレーヤーだったっけと思ってしまった。スタジオ・ミュージシャンというのは前に出てこないから、知らない内に聴いてるんだろうけど、それでも、フォーク、ロック、歌謡曲、ジャズ、オレもいろいろ聴いたけどなぁ・・・、と思ってしまった。
唯一覚えているのは、レザー・ディスクで持っていた井上陽水のライブ盤「クラムチャウダー」だが、あれはまずギターの大村憲司の存在感が際立っていた。ドラムに確かに村上はいたが、同じリズム・セクションならパーカッションの浜口茂外也の方がずっと印象に残っている。
もともとぼくはドラムという楽器が嫌いだった。ドラムの入っていない音楽を好んで聴いていた。ドラムの良さを本当に感じたのは、ジャズを聴き出してからだ。エルビン・ジョーンズとか聴いて認識が変わった。ずっと後になってから自分でも打ち込みをやるようになって、リズム楽器の気持ちよさを知った。村上の凄さに気が付かなかったのは、自分がそういう音楽的嗜好の人間だからだろうか。
でも違うよな。この本の中でポンタが一目置いてる林立夫とか、昔から好きだったよな。歌の味わいを壊さないセンスのいいタイコだなと思っていたもの。ドラマーとしてはあまり話題にならない松本隆のドラムとかも好きだった。自分の好きな歌の中で効果を上げているドラムは印象に残っている。
思うに、この人の音楽の好みとか、音楽に向かう姿勢が好きじゃないんだね。調べてみると、車で聴くぐらいしか使い途のないあの退屈なフュージョンとかを、好んで叩いてる人だ。誰よりも正確に、速く叩けたりするのかも知れないけど、ほんで?という感じの音楽だ。うまいんだろうけど、それだけだね。ぼくにとっては。
確かに面白い本だった。でも、「読めば読むほどイヤな男」と感じたその部分は、多分その人の音楽にそのまま投影していたのだろう。うまけりゃいいってもんじゃないところが音楽は面白い。]]>
Litti ピエール・リトバルスキー自伝
http://pororompa.exblog.jp/2382986/
2006-01-04T18:54:31+09:00
2006-01-04T18:54:31+09:00
2006-01-04T18:54:31+09:00
pororompa
読書的休日
リトバルスキーの自伝を読み返した。
ずいぶん前に買って読んだ本である。どうしてまた読み返す気になったのか自分でもよく分からない。多分、世界クラブ選手権でカズをチームに呼んだ監督として久しぶりに名前が出たからかも知れない。水害で捨てたかと思っていたが本棚に残っていた。
スペイン'82の頃から見ているが、リトバルスキーは無骨なドイツのチームの中でドイツ人という感じじゃなかった。華麗なプレーだった。3度のワールド・カップで連続して決勝まで戦っている。でも、決して幸せなことばかりじゃなかったようだ。ドイツという社会と合わなかったらしい。
日本に来てからのプレーは、全盛期を過ぎていたせいもあって、ストイコビッチなんかと比べると物足りなかったが、それでも好きなプレーヤーの一人だった。
この本を読んで驚くのは日本への没入の仕方である。でしゃばらない控え目な性格は、ドイツでは短所だったが日本では長所として働いた、と彼は言う。「要するにお前は元から日本人だったんだよ」と、元ドイツでチームメイトだった奥寺にも言われたそうだ。そして、日本で暮らすことを決心し、日本になじめなかった奥さんと別れ、日本人と再婚する。日本で指導者としてもライセンスも取っている。
J1で指揮をとるリトバルスキーが見たくなった。オーストラリアの次はぜひまた日本に戻ってきてほしい。]]>
ディック・フランシス 「興奮」
http://pororompa.exblog.jp/1940196/
2005-11-21T22:58:00+09:00
2008-01-03T16:15:26+09:00
2005-11-21T22:58:14+09:00
pororompa
読書的休日
入院中の兄は若い頃から大の読書家だ。だから見舞いには文庫本を持っていくのが一番いい。でも我が家の乏しい本棚からはそろそろ持っていくものが無くなってきつつある。
そんな折り、兄から珍しく電話が入った。「この間のディック・フランシスな、まだあるなら持ってきてくれ」と言う。あるある。このシリーズは十数冊並んでいる。
ディック・フランシスはイギリスのミステリー作家だ。元競馬の騎手で、競馬を題材にしたミステリーで世界的に有名な人である。この文庫本は、ミステリー好きで軽い蒐集癖のある妻が、結婚前に買いそろえたものである。度重なる引っ越しにも付き合い、水害も逃れ、「ブック・オフ」にも売り飛ばされなかったのは、それなりに愛着があったからだろう。
ぼくも昔読んで、面白かったという印象は残っているが、何しろ二十数年前のことなのでどんな話だったかさっぱり覚えてない。兄と話すときの話題にでもと思い、一冊読んでみた。
主人公は、オーストラリアで牧場主として成功し、亡き両親の代わりに弟妹達を育て上げた。しかし安定した生活が何か物足りない。そんな時、競馬界に蠢く悪巧みを探って欲しいという依頼を受け、報酬でなくやり甲斐のある刺激的な世界を求めて、悪の巣窟に忍び込む。自分の嫌悪するような人物を演じなければならないために苦しむが、最後には仕事をやり遂げる。
主人公の心情が一人称の語りで丁寧に書き込まれ、安っぽい物語が嫌いなぼくのような人間もうまく引き込んでくれた。ぼくは若い頃競馬は好きだったので、競馬場の思い出なんかを思い出しながら、懐かしい気持ちで読んだ。
悪い奴はほんとに悪辣で、主人公が何度も危ない目に遭いながら、最後はやはり悪が暴かれるというお決まりのパターンは気持ちがいい。そういう気持ちよい展開というのは音楽でも外してはいけない。
ただ、主人公が、「ストイック」ちゅうのかな、禁欲的というか、あまりにも格好良すぎる。依頼主の美人姉妹に迫られるのだが、淫蕩な妹を相手にしなかったのは分かるとしても、主人公も惹かれている真面目で品のいい姉さんの方といい仲になるのかと思えば、最後まで何にもない…。ううむ。そこら辺ががちょっとスカッとしないのは、読む方が下品なのか。
ともあれ、暇な休日なんかには悪くない。]]>
鎌田慧 著 「弘前大学教授夫人殺人事件」
http://pororompa.exblog.jp/105910/
2005-07-03T17:27:29+09:00
2005-07-03T21:10:56+09:00
2005-07-03T17:25:52+09:00
pororompa
読書的休日
時間待ちに寄った古本屋で百円で買った内の一つ。
推理小説ではない。冤罪事件を追ったルポルタージュである。人殺しも怖いが、無実の人を無理やり殺人犯人に仕立て上げていく仕組みの怖さ。
粗雑な警察操作、意図的な新聞記事、偏執狂的な検事、エセ「権威」によるいい加減な鑑定、頑迷な裁判官、世間の偏見、果ては証拠の捏造、偽証に次ぐ偽証で、全く無関係の人が「殺人犯人」に仕立て上げられていく。しかも、真犯人が名乗り出てもなお、なかなか罪が晴れない。
鎌田慧の故郷で起きた事件ということだが、そういうことよりも、「こんなひどいことを許していいのか」という深い憤りや正義感が根底に感じられる。
鎌田さんの文は、いつもそんなにうまいとは思わないのだが、やはり着眼点が鋭いというか、昔からいい仕事をしていたんだなあという感じがする。この事件も多くの人が知るべき事件だし、昔のことで片付けてほしくない。
ぼくは子どもの頃から、作り事より真実の記録の方を好む。よほどできがよくないと小説の類は読む気になれない。本当の話は何でも興味深い。
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