【音盤的日々 128】 RY COODER / BOOMER'S STORY
2007年 08月 31日
どんな記憶かいちいち書かないでおこう。他者にはどうでもいいことだし、取るに足りない記憶だ。悩める時代ではあった。将来が見えず、公園の迷路のように行き止まりにぶつかっては試行錯誤を繰り返していた。そんな時代に、サウンドトラックのようにライのこのアルバムが流れていた。
思えばライに興味を持ったのは、高校生ぐらいか。「ダーク・エンド・オブ・ザ・ストリート」が、ワーナー・パイオニアのサンプラーLPに入っていたのを聴いたことだった。インストだがこの演奏は強烈に耳に残る。都会の寂しい袋小路、その暗がりを思った。そして大学を辞めたり落ちたりしていた頃、兄貴の部屋の押入でこのLPは、へし曲がってしまっていたりしたっけ。波打つ針先から流れる「マリア・エレーナ」の美しさ。そしてへろへろとした物憂げなボーカル。何度も聴いたためにシャリつく音。そんな音とともに、あの水害までこのLPはぼくの人生に付いて来ていた。
2,3日前の夜、酔ったぼくは700円即決の中古CDを、朦朧とした中で落としていたようだ。ちょうどいいタイミングで、そして素晴らしい音で、夏の終わりに懐かしい歌が帰ってきた。邦題「流れ者の物語」。今思うと聴いていた自分自身が人生の流れ者だったのだ。
by pororompa | 2007-08-31 19:05 | 音盤的日々 | Comments(0)