年が明けるとぼくの退職の日がぐっと迫ってきたように思えた。1月の参観も終わり、もうあと大きな仕事は、2月の学級の芝居と年度末の文集、そして成績の集計だけだという気になってきた。ゴールが見えてくると頑張る気になるランナーのように、何かある種の「張り」を感じて休日を過ごす。
そんな張りのせいか大きめの音でジャズを聴く。それにしてもこれはまた、きわもの臭の漂う安っぽいジャケットだ。1962年、ソ連公演の様子をスタジオで再現したアルバムとかで、リーダーもはっきりしない。名盤ガイドでも見かけないし、いかにも駄盤ぽい。
なんでこれを買ったかというと、曲目が面白かったためである。モダンジャズではめずらしい「モスクワ郊外の夕べ」や「ヴォルガの舟歌」をズート・シムズやフィル・ウッズがどう演っているか興味があったし、「黒い瞳」なんてのも入ってる。
中身はビッグバンドで、自身は吹いていないが実質のリーダーは編曲指揮を受け持ったアル・コーンのようだ。1曲目あんまりロシアを感じさせない騒々しい曲が聴こえてくる。買った時は1曲目で興味を失ったような記憶がある。でも今日は体調がいいのか、そう悪くは聴こえない。低音をゴンギンゴンギンぶっ叩いた変てこなソロは誰かと思ったら、エディ・コスタだった。
2曲目から期待通りロシアンな哀愁が匂ってきて、かなり楽しめる。ディキシーではお馴染みの「モスクワ郊外の夕べ」も十分モダンジャズしているし、味わいも失っていない。後半も悪くなく、そしてラストの「黒い瞳」。これが期待通りの演奏だった。
編曲も演者も確かな腕のものばかりで、テーマがはっきりしている分これは意外に楽しめるアルバムだ。見直した。