【音盤的日々 262】 EARL HINES / HERE COMES EARL "FATHA" HINES
2010年 07月 25日
暑いままではジャズは聴く気になれない。エアコンの冷気を感じ、アイス・コーヒーを淹れ、4ビートのリズムに身を浸すと、ようやくメロディの流れに乗ろうという気持ちになる。
LP時代の愛聴盤の中にも、片面ばかり聴いていたというものがある。このアルバムもそうだ。CD化したもので聴き直すと、明るいA面も悪くないが、愁いを含みつつ快走するB面の3曲が素晴しい。
まずは、「スタンレー・スティーマー」。何度聴いても素晴らしい演奏だ。ミディアム・テンポで次々に繰り出されるマイナーの調べを聴けば、だてに「ジャズ・ピアノの父」と呼ばれているわけではないことがよく分かる。
テンポをぐっと上げた次の「バーニーズ・チューン」に入ると、御大はエルビンのブラッシ・ワークに刺激されていっそう凄みを増す。しかしエルビンも、うまいねえ。ここでは決して主役を食うようなことはしていないんだけど、この切れ味、絶妙のアクセントが、「父ちゃん」を本気にさせている。そしてハインズも、うまいねえ。名人が名人を刺激して丁々発止と渡り合う。この組合わせでよくぞ録ってくれたものだ。
ラストは「ドリームズ・オブ・ユー」でリラックスして終わる。聴いた後の、なんちゅうか、余韻。ああ、ジャズっていいなあ、この世の中には、まだまだ味わい尽くしていない果実が、たわわに残っているんだなあ、そんな気持ちにさせられた。
*YouTube Earl Hines Trio "Dreams of You"
by pororompa | 2010-07-25 16:21 | 音盤的日々 | Comments(0)