【音盤的日々 260】 ERIC CLAPTON / E.C. WAS HERE
2010年 05月 29日
その中で、今日特に、「このアルバムって凄かったんだなあ」と思ったのが、このライブ盤「E.C. Was Here」だ。LP時代でA面3曲、B面3曲って、まるでジャズ・アルバムの作りじゃないか。本人がレコードにするなんて予定は全くなしに弾きまくっている。乗った状態のクラプトンの、一番いい状態を凝縮して詰め込んだような作品だ。
エレクトリックな音というか元々ロックを好まないぼくだが、この人の弾くフレーズはいつも「歌っている」ので好きだ。1曲目から強烈なスロー・ブルース「Have You Ever Loved a Woman」。「女を愛したことあるか」なんてレベルじゃない、親友ジョージ・ハリスンの妻を直談判して自分の妻にしたとか凄まじい女性遍歴のクラプトン。そんな男の説得力ある渋い歌声と、ジョージ・テリーとの壮絶なギター・バトルが炸裂する。いや、炸裂という感じじゃないな。どこか抑制された中に激しく情感のこもったギターソロなんだよな。レコード化に反対していたクラプトンが、これを聴いて同意したらしい。本人も会心のナンバーなんだ。
2曲目も切々としたバラードなんだけど、バックの女性ヴォーカル、イヴォンヌさんとのデュエットがいい。歌っている内にだんだん乗ってきましたという感じの、「酔いの回り具合」が伝わってくる。これクラプトンの曲なんだね。
3曲目はアコースティックに持ち替えての「Driftin' Blues」。さすらいのブルースときたか。これもしみじみ系だ。時折聞こえる野郎どもの感極まって騒ぐ声が、いい感じで煽る。これにこっちもつい引きずり込まれる。そして酔いが回ってくる。ゆっくりのブルースなので、ついギターを抱いて参加してしまう。延々11分続くブルースが、長さを感じさせない。
4曲目がまた素晴しい。「Can't Find My Way Home」。「さすらいのブルース」の後が「帰り道が分からない」。アコースティックを爪弾きながらの、イヴォンヌさんとのデュエット。合間のソロは、どのフレーズも歌心に溢れている。思えばこの人ほどロック・スターらしくないロック・スターはいないだろう。ぼくの嫌いな軽薄なロックはこの人にはまるでなく、素っ気ないほど音楽が剥き出しのままだ。そこが好きだ。
5曲目もまたまたじっくりのエレクトリック・ブルース。「Rambling on My Mind」、「帰り道が分からない」の後が「わが心の放浪」なんてできすぎてる。いつものことながら、自分で歌いながら自分で合いの手を入れるってのが凄いなあ。そしてギター・ソロ。とにかくライブだから存分にロング・ソロを取る。堪能って感じだね。
最後だけは軽快なブギ。6曲だけど、腹一杯にしてくれてアルバムは終わる。引き締まった素晴らしいアルバムだ。唯一嫌いなのはジャケットだけ。
by pororompa | 2010-05-29 17:18 | 音盤的日々 | Comments(2)
E.C. Was Hereですか。渋いですね。
私もこのアルバムは若い頃、よく聴きました。
しばらくぶりに、イボンヌ・エリマンの名前を思い出しました。
E.Cのアルバムではおなじみですが、映画『ジーザス・クライスト・スーパースター』で、マグダラのマリア役をやり歌っていた「私はイエスがわからない」が忘れられません。
でもやっぱり、ロックは人間の声による「歌」が主役ですね。歌には、器楽だけではどうしても出せない味があるなと思いました。
平泉さんがブログ再開でまず取り上げた「There's One in Every Crowd」、これもぼくは好きなんですよ。「スウィング・ロー」のレゲェ版、思わずリピートしてしまいました。