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semスキン用のアイコン01 カテゴリ:松田國弘( 4 ) semスキン用のアイコン02

  

semスキン用のアイコン01 兄の本 semスキン用のアイコン02

  

2007年 08月 16日

e0006692_121139.jpg 死んだ兄は読書が趣味の男で、コレクターという訳ではなかったが自然に本は溜まっていった。若い頃から部屋を尋ねると、壁面はいつもちょっとした図書館のようで、本を置くだけの部屋もあったりした。死ぬ前の荒れ果てた生活の中でも、さすがに本だけはちゃんと本棚に立ち並んでいた。その後入院中に、部屋が立ち退きを命じられたので、本は親戚の家の倉庫に運び込まれ、ダンボール箱に詰め込まれたままになっていた。

 先日用があって久しぶりに故郷の町へ帰ったので、気になっていた兄の本をいくつか持ち帰ることにした。いくつかというのは、全て持ち帰るにはあまりにも量が多すぎるからである。まず残す価値のあるものを選別し、捨てるものは捨て、残すものは残す。値打ちはあるが誰も読みそうにないものは売る。その辺の判断は、弟であるぼくの仕事だとは思っていた。捨てるもの、残すものをより分け、ダンボールに3箱ほど持って帰ってきた。ダンボールは全て本ではないとしても20箱ばかりあったので、まだほんの一部だ。

 兄の興味の対象は民俗学を中心に多方面に渡るが、兄弟であるせいかぼくから見ても興味を惹かれるものが多い。家族も読むかも知れない。そのために大きめの本棚を買って廊下に置いていた。もちろん我が家も狭いので、全ては収めきれないが、できるだけ残そうと思っている。売るものはそれほどない。傷みも激しいし、売っても二束三文だろう。若い頃建築関係の業界誌に勤めたりコンサルタント業をやっていたりしたことがあるので、そういう専門書も多いが、売れるとは思えないのでそれは捨てざるを得ないだろう。

 持ってきた本を全部取りだし、天日の下に晒しながら一冊一冊全部拭いた。学生時代に買ったと思われるものも多い。兄の住んでいたアパートのすぐ側にあった「一進堂」という古本屋のシールが貼ってあるからだ。その後の仕事に就いた時代を示す「蔵書印」の押してあるものもある。

 ぼくは実感した。これはつまり、兄にとって本というのは、ぼくにとってのLPやCDのようなものだ。歩いてきた人生の、時代や場面と深く結びついている。だから捨てられなかったし、荒廃した生活の中でも本棚に収まっていたのだ。赤の他人には、ただの古本の山や古CDの山に過ぎないが、本人には宝なのだ。ぼくは本人ではないがまるっきり他人でもない。中間の人間である。丸ごと受け継ぐことはできないが、ゴミの山にもできない。その精髄だけでも残しておきたいと思った。それが祭りも拝みもしないぼくなりの「供養」だ。

 読める状態にして本棚に並べてみると、およそ百冊。大きな本棚なのでまだ余裕がある。本棚がそのまま「松田國弘文庫」になってきた。これを読み尽くして、兄のたどった精神世界を覗いてみようと思う。

by pororompa | 2007-08-16 12:29 | 松田國弘 | Trackback | Comments(3)

semスキン用のアイコン01 兄 松田國弘 永眠 semスキン用のアイコン02

  

2005年 12月 04日

兄 松田國弘 かねて入院治療中でしたが、12月3日、すい臓癌にて死去しました。53歳でした。生前のご厚情に感謝致します。

by pororompa | 2005-12-04 13:29 | 松田國弘 | Trackback | Comments(3)

semスキン用のアイコン01 昏睡 semスキン用のアイコン02

  

2005年 12月 03日

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明け方の四時半。兄はずっと眠り続けている。酸素が送り込まれ、心臓の動きが表示される。命がまだ残っているなら、もう一度話したいと思った。でもそれは無理のようだ。

今夜は昨日より冷えた。寝ないで働く看護士さん達の声や足音が聞こえる。

by pororompa | 2005-12-03 04:42 | 松田國弘 | Trackback | Comments(0)

semスキン用のアイコン01 危篤 semスキン用のアイコン02

  

2005年 12月 02日

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病室で夜が開けた。昨夜兄危篤の連絡を受け駆け付けたが、まだ今のところ心臓は動いている。しかし、癌の末期だから意識は回復しないだろう。肉体は生きているけれど、人格は死んだと覚悟した。静かな重い空気が流れている。放ってきた仕事も気になる。

by pororompa | 2005-12-02 09:19 | 松田國弘 | Trackback | Comments(0)