【音盤的日々 186】 TOMMY FLANAGAN / GIANT STEPS
2008年 09月 07日
BGMにインターネット・ラジオで録った様々な音楽を流し続けた。世界中のインターネット・ラジオから目当ての曲を拾い集めて来るという強烈なソフトを手に入れてから、そんな感じの音楽の聴き方になっている。「RADIO TRACKER」というそのソフトについてはまたいつか書くことにしよう。
なぜならば、そうやって集めた音楽は確かに興味深くはあるけれど、「音楽を聴いた」という充実感が得られず、その反動でこのLPを聴いたからだ。日曜も夕方になると、明日からの仕事のことが気になってくる。休日モードから転換する意味もあって、このアルバムを引っ張り出したのだった。
ライナー・ノートを見ると、隅っこに鉛筆で「'82・9・12」とメモしてある。1982年といえば、ぼくが就職した年である。昔は、1枚1枚が今よりもっと貴重だったので、こんな風に日付や購入場所を書き入れたりしているのがある。今になってみると興味深い。このアルバムは学生の頃買ったと思っていたが、違っていたわけだ。記憶というのは当てにならないものだ。
針を落として音の違いを感じた。ラジオのMP3とは音が違って当たり前だが、ベースの音が何か根本的に違う。缶コーヒーと豆で淹れたコーヒーぐらい違う。いくらぼくが「違いが分からない男」でも、これは感じないわけにはいかない。
トミー・フラナガンは70年代にドイツのenjaから「エクリプソ」という傑作を出している。リアル・タイムで聴いて気に入って以来、似たようなアルバムを探し続けた。ドラムのエルビン・ジョーンズがいいのか、いやベースのジョージ・ムラーツのおかげか、はたまたenjaだからいいのか、いろいろ探し求めたが、「エクリプソ」を越えるものはなかった。その中で、このアルバムは比較的気に入ったように覚えている。
ベースはそのジョージ・ムラーツ、ドラムはエルビンではなくアル・フォスターだ。コルトレーンの愛奏曲集なので、ピアノ・トリオといってもけっこう硬派の内容なのだが、そこはトミ・フラ、破綻なくジャズの濃さを味わわせてくれる。
ドイツのジャズ・レーベルといえば昔からクールなECMとホットなenjaが有名だが、よりジャズを感じさせるenjaにぼくは親しみを感じている。どちらもジャケットがいいが、このアルバムも見事だ。「ジャイアント」というにはほど遠いどっかの倉庫かなんかのただの階段(ステップス)が、何とも見事にジャズの絵面になっている。
それにしても9月というのは教員稼業でもっともきつい季節である。特に新採の年の9月の苦しさは今でもはっきり覚えている。渡り廊下をよたよたと歩いていた自分の姿が今でもはっきり思い浮かぶほどだ。そんな青春の終わりのような季節に、残暑と秋風の中で、ぼくはこんな音楽を聴いていたわけだ。
by pororompa | 2008-09-07 18:27 | 音盤的日々 | Comments(0)