DCD-1610の復活
2008年 04月 13日
そんなことを思い立ったのは、新しく買ったCECのCD-3300に不満が出てきたからである。一つは液晶表示板の見にくさだ。中近用眼鏡をかけていると、小さくて青い表示はさっぱり見えない。若い人にはどうでもよいことなのだろうけど、中高年には意外な欠点だ。そしてもう一つの不満は、トレイが敏感過ぎて、入れたCDがもう一度出てきてしまうことが多いことである。置き直さずにそのままもう一度ボタンを押すと今度はかかる。それでも確かに初めから慎重に置けば一度でかかることが多いから、結局置き方が悪いんだろうし、多分そういう仕様なんだろうけど、いらいらしてしまう。
そんなこともあって、元のCDプレーヤーのDCD-1610が直せないかなと思いながら何気なく検索していたら、B太郎さんという方が開いておられる「楽しいB級趣味」というサイトに、興味深い記事があった。それによると、CDプレーヤーのトレイが出てこなくなったのはほとんどの場合ゴムベルトが劣化したからであり、「バンコード」というもので代用できるそうである。しかもぼくのと同じDCD-1610を直した様子が写真入りで掲載されている。これはひょっとして、ぼくでも直せるのではないかという考えが浮かんだ。
実を言うとぼくは純粋な「文系人間」で、メカはまるで苦手である。おまけに工作が苦手で、子どもの頃から理科も工作も成績が悪かった。何かを作ってもまともに完成したことがない。職場では視聴覚主任や情報主任を仰せつかっているが、音楽聴きたさやインターネット見たさで何とか配線や操作は覚えるものの、中の仕組みはよく分からないし、第一興味がなかった。ソフトにはこだわるがハードには無頓着な人間なのである。そういう人間が、原理も分からない「CDプレーヤーの修理」など、無謀そのものなわけだ、普通。「それでも、ひょっとしてやれるかも」という幻想を持てるほどの説得力がそのページにはあった。「ダメモト」というのもある。どうせ捨てようと思っていた20年前のCDプレーヤーだ。ぼくは興味が湧いてとりあえずその「バンコード」なるものをヤフオクで取り寄せた。
それは何かよく分からない樹脂でできた一本のひもで、これで輪ゴム状の部品を熱で溶かして繋げなくてはならない。その長さも分解して測るらしいので、思ったより面倒だと思った時は遅かった。始めてしまったからにはしょうがない。
まずは二重になったDCD-1610のカバーを開ける。ところがそこからが分からない。通電してトレイを出そうにも、元々トレイが出ないから修理しているのだし、途方に暮れてしまった。あれこれいじくっている内にトレイは出てきたが、ベルトやピックアップに至るまでが分からない。悪戦苦闘してやっとベルトまでたどり着いた時は夜中の12時。ベルトが下にももう一つあるというので、これも試行錯誤してフロント・パネルを外す。この間、パネルのツメを一個折っただけで済んだのはぼくにしては上出来だった。
さあて、2本のゴムベルトはなんとか外した。ところが、この輪ゴム状の部品を作るのがなかなか難しい。できたつもりがすぐに切れる。夜中の3時までかかってやっと2組作って寝た。朝起きてできをみると、あっさりちょん切れるではないか。がっくり…。作り直してはみたものの、もう半分は諦めて放って置き、溜まっている別の仕事にかかった。
昼過ぎに見ると、何とか繋がっているようにはある。おそるおそるはめてみると、どうにかはまった。サイトには、「いろいろな長さを作って試せ」とあるが、そんな余裕はない。とりあえずこれでやってみよう。試してみると、ゆっくりだがトレイが動いた。妙にゆっくりな気もするが、とりあえず動いたではないか。何度も動かしても大丈夫だ。おお、成功だ。浮き浮きした気分でカバーを取り付ける。その時、確かにあったはずのネジが2本足りない。おかしいとは思ったが、まあカバーだしいいか、と思って気にせずにいた。
さてCDを聴きましょう。ところが・・・。ん・・・?、鳴らん・・・。鳴らないどころかCDを認識しない・・・。この瞬間、どっと空腹を意識した。「ま、おれがCDプレーヤーを直そうとか思うのが間違いなんだよな」と言い聞かせながら、またいつか暇な時にいじってみようと思い直して飯を食う。
腹が満ち足りたら、どうも気になってきた。意を決して、もう一度開けてみる。トレイを出し入れしながら、ふと気が付いた。トレイが作動する微妙な辺りに、ネジが外れて挟まっているではないか。しかも2本も。そこは磁力があるので吸い寄せられたようだが、それにしても笑ってしまう。ぼくの工作能力はこの程度だ。いつもネジが余ったり足りなかったりする。
そして今度はあまり期待せずにCDを入れた。ゆっくり入っていく。そして読み込む・・・。読み込んだ!。その瞬間、実に唐突に「ワーク・ソング」が豊かな音で鳴り出した。おお、鳴った!!。そして音がいい。気のせいだろうか。買ったきりつまらんと思って放っていた「ワーク・ソング」が、生々しく鳴っている。何というか、響きが痩せていない。深い豊かな響きがする。元々はこのDCD-1610、CECのCD-3300なんぞとは格の違いはあるのだ。今その違いを、直感的に、音で感じてしまった気がした。
たまに音跳びがするが、レンズの掃除をしたら収まった。今のところちゃんと鳴っている。まだまだ完全にとは言えないかもしれないが、とりあえず死にかけていた古いプレーヤーDCD-1610が甦って、また音を聴かせてくれた。しかもど素人の手で。インターネット恐るべし。そして教えてくださった方、ありがとう。
by pororompa | 2008-04-13 16:32 | こころの糧 | Comments(0)