【音盤的日々 122】 NEIL YOUNG / RUST NEVER SLEEPS
2007年 08月 09日
ところが今日はそのどれも聴く気分じゃなかった。歌が聴きたかった。いや、正確に言うとニール・ヤングが聴きたくなったんだ。最近、若い頃のライブ音源が発売されてえらく評判がいい。聴いてないCDが溜まっているというのに、今日はそれも注文してしまった。まあ年に一度の夏の休みだからいいだろう。
ということで急にニールが聴きたくなり、これを引っ張り出した。衰えを知らぬ多作家、予想も付かぬとんでもないものを出したりする気まぐれの人。年に1枚くらいのペースで30年以上も走ってきて、バラエティに富んだ作品群の御大だが、これはまあ誰も文句の言えない傑作だろう。
ニールと言えば静と動の両面持つ人だが、これは両面ある。LPではA面がアコースティック、B面がエレクトリックだ。ぼくは元々ハード・ロック嫌いのアコースティック派だが、ニールならどっちもOKだ。とりあえず頭から聴き始める。
今日はいつもより詞に注意して聴いた。何しろ近作でアルバム丸ごとイラク侵略戦争に抗議した人だ。歌詞はイメージのおもむくまま支離滅裂に展開して行くので、意味のよく分からないものも多いが、注意して聴くとこれまでも度々そういう姿勢は見せてきた。古くはオハイオ州立大学の学生が警官隊に射殺された事件に抗議した「オハイオ」に始まり、スペインのインカ帝国侵略やアメリカの先住民虐殺を扱った歌も何曲かあるし、天安門事件や湾岸戦争にもそのつど鋭く反応してきた。平和に暮らしていた人々に向けられた暴力を憎む、という、明確な方向性がある。
このアルバムでもアメリカの先住民を題材にした「ポカホンタス」など、けっこうシリアスな題材を扱っているが、中でも特に痛ましいのが、エレクトリック・サイドの1曲目「パウダー・フィンガー」だ。銃を持って押し寄せる者達に応戦する若者の死までが、緊迫感を持って描かれる。さらに、「会えなかったぼくの未来の恋人によろしく」と、その若者にあったかもしれない幸せな未来まで語ることによって、いっそう虚しさを感じさせる。聴く度に恐ろしく、また哀しくなる名曲だ。
アルバム全体としては短いが、粒ぞろいの曲ばかりで、2回繰り返して聴いてしまった。
by pororompa | 2007-08-09 21:37 | 音盤的日々 | Comments(0)