【音盤的日々 120】 BILL EVANS / THE COMPLETE LIVE AT THE VILLAGE VANGUARD 1961
2007年 07月 21日
このライブ盤の素晴らしさは、今更ぼくなんかがくどくど書かなくてもいい。ジャズファンなら誰しも、「マイ・フーリッシュ・ハート」の出だしを初めて聴いた時の感動を覚えているだろう。ぼくもその一人で、若い頃から今日まで30年も愛聴してきた。
ところがぼくは、どういうわけか、「Waltz for Debby」と、「Sunday At The Village Vanguard」の形では持っていなかった。最初に買ったのが、「The Village Vanguar Sessions」という2枚組の輸入LP盤だったのである。
そのLPは、当夜の演奏順に並べた編集盤で、今回買った企画の原型みたいな作りだ。違っているのは別テイクが入っていないことで、資料的価値は今回の方が上だろうが、鑑賞用としてはより引き締まっていて優れているとも言える。オリン・キープニューズ自身が監修しているので中身は確かなものだ。ただ、「Waltz for Debby」も「Sunday At The Village Vanguard」もジャケットが見事だし、曲順もよく考えられているなと思う。ぼくは苦労して「Waltz for Debby」の曲順のテープを作って聴いたりしたものだった。
CDの時代になって、やっとこの2作品を買い求めたが、なんと「Waltz for Debby」の方はある人に貸した時、中身なしで戻ってきて、それ以来見つかっていない。代わりにCD-R盤を入れている。なぜかこの「Waltz for Debby」には縁がない。
さて、今回の内容だが、音は良くなったという評判なので早速かけてみると、確かにベースの音が生々しい。ところが1曲目「グロリアズ・ステップ」、気持ちよく聴いていると、いきなり音がぶち切れる所がある。「不良品を売りやがって!」と頭に血が上ったが、そう言えば何かに、「開演直後の停電でボツになったテイクが入ってる」とか書いてあったことを思い出した。これがそうなのか。それにしてもこんな出来損ないも入れるとは。やり過ぎとも思えたが、なるほど「コンプリート」には違いない。気を取り直して聴き進める。
音がいいのは、マスター・テープから直接デジタル化したというからそのおかげだろう。ただ、時々おやっ?と思う所がある。聞き慣れた演奏だけに感じてしまう。音が揺れたりかすれたりするのだ。技術は最新でも、その分マスターの劣化が進んでいるのだろう。それは少しばかり物悲しいことだった。
マスターの劣化は仕方ないにしても、残念なのは解説のくだらなさ。某通販サイトでも指摘されていたが、この岩波洋三という評論家は本当につまらない。ありふれたことを通俗的な表現で書き連ねる人で、昔からこの人がライナーを書いていると損をした気分にさせられたものだ。ここに呼んではいけない人だったよなあ、と残念に思った。
とは言え、「あの」ビレッジ・バンガードである。聴き飽きることを恐れながら、未だに聴き飽きることのない、永遠の名盤である。拝みつつ謹んで聴くことにしよう。折しもちょうど夏の休みだ。教員のハーフ・タイムではないか。心の洗濯。
by pororompa | 2007-07-21 18:36 | 音盤的日々 | Comments(2)
THE COMPLETE LIVE AT THE VILLAGE VANGUARD 1961 は、私も所有しております。もちろん、「Waltz for Debby」と、「Sunday At The Village Vanguard」の方が長年聴いてきたせいか耳になじんでいるのですが、最近はなぜかコンプリート盤を聴くことの方が多くなっているような気がします。音の定位感が違うのが新鮮なのかもしれません。
岩波洋三という評論家の文章については、あまり気にしませんでした。このヴィレッヂ・ヴァンガードのライブについては、どいつもこいつも同じようなコメントばかりなので、特に気にならなかったのです。以後、岩波洋三氏の名前を覚えておきたいと思います。
例の4部作を比べてみると、演奏のレベルという点では、あまり人気のない「Exprolations」の方が上かもと思ったりしています。それでもやはりジャケットも含めて、「Waltz for Debby」という作品は単体で大きな魅力を持っていますね。
岩波氏はたくさんの本を出している売れっ子の評論家です。ぼくは一度もこの方の文に感心したことはないのですが、ひとの悪口を書くのはあまりいい気持ちではありませんね。