ぽろろんぱーぶろぐ

pororompa.exblog.jp

ブログトップ | ログイン

semスキン用のアイコン01 今村克彦氏に思う semスキン用のアイコン02

  

2006年 12月 03日

今村克彦氏に思う_e0006692_19294231.jpg 教育を扱ったテレビ番組に、元小学校教師の今村克彦氏が出演しているのを興味深く見た。以前に彼の講演会を企画したりして、関わりがあったからである。小学校教師を辞めたのは知っていた。ちょっと残念な気持ちにもなったし、大きな賭けだなと他人事ながら心配にもなったが、そうなればテレビ出演は予想された成り行きで、驚きはなかった。残念な気持ちになったというのは、彼のような人は、教育現場にいてこそ値打ちがあるのではないかと思ったからである。そして心配になったというのは、経済的なこともさることながら、単なる「毛色の変わった芸能人」として使い捨てにならなければいいがと思ったからである。マスコミで弄ばれて彼の情熱や真摯な思いがねじ曲げられ、さらには自らも変質してしまうことにならなければいいがと感じたのだった。

 今村氏を呼んだのは1999年だからもう7年も前になる。春に呼んだ講演会が好評で、秋にもう一度企画したように記憶している。彼の所属していた生活指導の教育研究団体が呼んだのに便乗しての企画だったが、彼の著書「今村組346人」が大変面白かったからでもあった。実際彼の一番の才能はこの文章力にあるのではないかと思うくらい面白い本である。風貌からして「こんな教師がほんとにいるのか?」という格好をしており、言動も破天荒だが、ある意味では非常に真面目な一面もあり、子どもの気持ちを理解し子どもをよくしようという、一本筋の通ったものを感じた。建前ばかりの学校にこそ、こういう人物がいて全体としてはバランスが取れるのではないか、こういう人でしか救えない子もいるのではないかと感じたのだった。高学年指導で行き詰まっていた当時のぼくには、大きなヒントと刺激をくれた実践家だった。

 空港まで迎えに行って一緒に昼飯を食ったが、素顔の彼は穏やかな常識人という感じで、傍若無人な感じはなかった。ひっきりなしに携帯電話が鳴り、或いはメールが入り、様々な相談に答えているようだった。教えた子どもたち(彼の言う「今村組」)との繋がりを大切にしている感じだった。音楽の話になった時に、急に「宮崎にもオンセン、あるんですか?」と聞くので、なぜ温泉の話をするのか不思議に思いながら適当に答えていたが、それは「音セン」、つまりぼく自身もお世話になっている「音楽センター社」のことだった。「ロック・ミュージシャン」としての彼のCDも、「京都音楽センター」という所から出ていたのである。ただし著書と違って彼のCDはぼくの趣味とは大きく異なり、今もって最後まで聴き通すことができないでいる。

 講演の方は著書同様に面白く、人を惹き付ける才能に恵まれていた。講演は二回とも好評で、参加者の感想を彼に見せたのを思い出す。そういう意味では、彼はテレビが呼びそうな強烈な個性と才能をもっている。子どもたちでなくても影響を受けそうな人物だった。酒の席でもっと彼の地が出てくると、多少違和感を感じる面もあったが、大筋としては共感できる人物だった。次の年、生活指導の研究団体の大会が宮崎であった時も酒を飲む機会があった。大淀河畔でギターを弾いて一緒に歌い騒いだことは楽しい思い出だ。

 その後、2冊目の著書を読んで、彼が一時休職していたことを知った。著書も1冊目ほどの勢いがなかった。彼ほどの自信に満ちた教師でも心の病で休むことがあるのかと衝撃を受けたが、ペースを無視して突っ走りやすい情熱の人である反面、繊細な気配りの人でもあるからなのだろうかと思ったりした。

 初めにも書いたが、彼はもう現役小学校教師ではない。テレビで派手な活躍を見るたびに、ぼくはそのことに一抹の寂しさを感じる。彼の最大の魅力は、彼の歌や踊りやトークではなく、学校で子どもたちに向き合っている姿にあったと思うからである。

by pororompa | 2006-12-03 19:39 | 本業方面 | Comments(0)