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semスキン用のアイコン01 ハウルの動く城 semスキン用のアイコン02

  

2006年 07月 21日

ハウルの動く城_e0006692_1784025.jpg ようやく1学期が終わった。じゃなくて、終わってない、なんて書けばいいんだろう。2学期制になったので1学期は終わってないが、ようやく一区切りついた。学校は明日から夏休みである。安堵感はあるけれど充実感はない。何となく虚ろな気分で晩飯を食い、珍しくテレビを観た。宮崎駿の数年前の作品「ハウルの動く城」が始まった。普通の日だったら観なかっただろう。

 ぼくは子どもの頃からアニメはあまり好きじゃなかった。ちゃちな感じがして入っていけなかった。宮崎駿の作品がそういうものとは違うと知ったのは、ずっと大人になって、テレビの小さな画面で「風の谷のナウシカ」観てからである。それ以来大体の作品は観ているが、「千と千尋」を観ていないからそれほど熱心なファンとは言えない。それでも我が家の子どもたちを連れて映画館で観た「もののけ姫」はインパクトがあった。

 この「ハウル」が上映された頃は、もう子どもたちは大きくなっていたので自分達で観に行った。帰ってきてからの子どもたちの感想は、特に感動したようにも見えなかった。もっともこの人のはそれまでが凄いのばかりだから、どうしても期待し過ぎてしまう。

 そんなわけでぼくは数年遅れでこの映画を観た。観終わった後、ぼくはよい気分になった。いい時に観たと思った。後味のよい映画である。ストーリーが難解だという批判があるようだが、確かに訳が分からない筋だ。でも全体としては感覚的に分かる。宮崎駿の持っている、純真な愛への賛美と、社会悪への怒りが、鮮明に出ている。そしていつもの親しみのあるキャラクタデザインと、得意技のアニメーションらしい鮮やかな動き、奇抜な演出が次々登場して飽きさせない。

 宮崎駿が子どもたちに人気があるのは、もちろんその絵と動きにあるのだろう。でも大人の間にもその評価を高めているのは、思想をもった人間が作り出す作品の深みだと思う。彼はインタビューで、「イデオロギーやメッセージを意図的に観客に伝えようとはしていません。そんなものが僕の作品の中に本当に存在しているとしたら、自然に出てきているにすぎません。」と言い、「僕らがハウルを作ったのは、戦争や経済危機など、この世界に不幸があまりにも多すぎるからです。」と述べているが、社会悪に正面から向き合ってきた彼の「自然に出て」くる怒りが、今回の作品からもビンビン伝わってくる。それが縦糸とすれば、「耳を澄ませば」を企画したような「純愛の肯定」が横糸だ。作品全体を貫くものがはっきり感じ取れるから、支離滅裂に見えるストーリーも、説明できない詩のように味わえるのだ。

 ピュアなラブ・ストーリーであり、優れた反戦映画であり、わくわくする活劇であり、通俗性と深みを併せ持った作品。傑作のひとつに数えていいと思う。

by pororompa | 2006-07-21 23:59 | たまには映画を | Comments(0)