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semスキン用のアイコン01 【音盤的日々 258】 BEN WEBSTER QUINTET / SOULVILLE semスキン用のアイコン02

  

2010年 05月 16日

e0006692_12482850.jpg 「人生の危機」というのが節目節目にある。あの水害もそうだった。おそらくどの人にも、どの家庭にもあるのだろう。詳しくは書けないが、我が家の経済状況が想像以上に厳しくなっていることが分かり、昨日は子どもたちにメールを書いて頼み事をしたり、ネットで家族会議を開いたり、遅くまで話し合ったりした。

 結論から言えば光は差したし、だからこうして音楽を聴いていられるのだが、思えば昨日ほどよい子どもたちを持った幸せを感じたことはなかった。「しろがねもくがねも玉も何せむにまされる宝子にしかめやも」、山上憶良が時を越えて胸に迫ってきた。

 だがそのとばっちりで、職場のPTA奉仕作業を欠席してしまった。休みの日を早朝から集まった同僚や保護者の皆さんには本当に申し訳ない。今日はその申し訳なさで、何か落ち着かない休日だ。

 このベン・ウェブスターの「ソウルヴィル」は、長い間楽しんで聴くことができなかった盤である。「トラウマ」という言葉があるが、これはぼくが若い頃、第一志望だった名古屋大に落ちて、家に帰り着いた時に聴いた盤なのである。その惨めな、つらい気持ちは忘れることができない。確か、一浪して入った京都教育大を中退して、実質二浪の時だったと思う。予備校に行ったこともなく、生活も崩れていたので、自分でも通る可能性は低いのは分かっていたのだが、いよいよ一縷の望みもうち消され、失格を宣告されたのだった。

 もっとも、今思うと、これは覇気に充ちているはずの二十歳の青年が聴くような音楽ではない。スウィング・ジャズの時代の、スロー・バラードの名手が歌い上げる、情緒纏綿たるバラード集なのである。こういうものを大学に入る前に聴いていたこと自体が、すでに受験生としては「オワッテイル」感じがする。そしてそれが、よくも悪くもぼくなのだった。

 LPをかけてみると、B面を中心に聴いていたことが分かる。特に、1曲目、「恋人よ我に帰れ」、これが極上の名演である。「あなたがしてくれたどんな小さな事も思い出される、私は寂しい。空は青く、高く、月も新しい、なのに私の愛だけは古びた、私の熱い心は歌っている、恋人よ我が元に帰れと」 恋人は決して帰って来はしない。その溢れるような情感を、切々とした思いを込めてベンが吹ききる。歌詞まで聞こえてくるような名演である。ピーターソンにレイ・ブラン、バックもいい。

 そして今日聴いた中で思ったのは、2曲目の「Where Are You」、これが素晴らしい。名曲名演ばかりなので特に意識しなかったが、これもズーンときた。

 心が沈んでいる時、明るい音楽は聴けるものではないのだ。こういう日だからこそ、久しぶりにこの名盤を味わうことができたのかも知れない。
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by pororompa | 2010-05-16 13:59 | 音盤的日々 | Trackback | Comments(0)

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