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semスキン用のアイコン01 【音盤的日々 479】関谷晋 指揮 晋友会合唱団 / 林光編曲 混声合唱による日本抒情歌曲集 semスキン用のアイコン02

  

2024年 02月 27日

【音盤的日々 479】関谷晋 指揮 晋友会合唱団 / 林光編曲 混声合唱による日本抒情歌曲集_e0006692_12014311.jpg 前回の流れでこういうものが聴きたくなり、ちょうどメルカリで手に入れて聴いた。

 編曲した林光という人は、芸術音楽の人であるが、音楽教育にも多大な影響を及ぼした人で、ぼくの関わる教育研究連絡団体の中には彼を信奉して、ほとんど彼とその周辺の作品ばかりしか歌わないような流派もあるぐらいだ。そこまでいくとぼくもどうかと思うが、まあ大家であるのはまちがいない。

 その林光の、これは最も通俗的というかポピュラーよりの仕事かと思うが、興味深いのは「『日本の抒情歌』に寄せて」と題してこんなことを書いていることだ。「シューベルトの歌がすばらしいのは、その時代を代表する芸術歌曲でありながら、同時に愛唱歌=流行歌でもあり得たことだ」。そんな雑談を仲間と交したことがこの編曲をするきっかけになったという。高い芸術性を持った歌曲が同時に大衆にも愛される、そのことが「すばらしい」と言っているのである。そして、「初期の作曲家」の作品を合唱編曲したものには、「やたらとくふうをこらし」たり、「合唱音楽らしさをむりやり押しつけているようなものが多い」ことに疑問を感じてきたと言っている。元の歌の素朴で親しみ深い味わいを損なわないようにしながら、格調高く仕上げてみせるという意気込みが感じられる。

 ではどのように編曲したのかと、早速その作品を聴いてみると、立て続けに無伴奏の合唱で「荒城の月」「からたちの花」「城ヶ島の雨」「カチューシャの唄」と流れてきた。選曲も本人で、「いちばん苦労した」と書いている。「荒城の月」はともかく、「からたちの花」「城ヶ島の雨」「カチューシャの唄」という流れはぼくにとっては好きな歌ばかりで、まずこの選曲におっと思った。芸術歌曲的な「からたちの花」と流行歌第1号と言われる「カチューシャの唄」では随分と世界が違うようにも思えるが、調べてみると「浜辺の歌」なども含めて時代的には同じ大正時代の自由な雰囲気の中で生まれてきた歌のようだ。聴いて違和感はない。

 後半も「この道」や「ペチカ」など山田耕筰ナンバーに「ゴンドラの唄」なども絡ませて、飽きさせずに進む。彼の古い歌に対する的確な評価や柔軟な好みが伺われて面白い。終盤は「浜辺の歌」や「椰子の実」を、ピアノを単なる伴奏以上に活躍させて聴かせる。

 不満は、と言って失礼なら好みとかの問題なのかもしれないが、ソロイストと一部の編曲である。編曲については「原曲の音の組み立てにしたがったもの」と「旋律だけを生かして自由にあつかったもの」とがあると本人が書いている。後者に違和感を感じる曲が数曲あった。編曲者の気持ちはよく分かる。やたらと工夫して持ち味を損ねたくはないが、違うコードやリズムでリフレッシュでしたくなったのだろう。耳になじんだものが大きく変わると多くの人はあれっと思う。先人の仕事に林光が少し違和感を持ったというのとは違うかもしれないが、単なる一鑑賞者のぼくにも少し違和感を感じる瞬間があった。だが全体的には「敬愛する諸先輩達に、いくらか批判をこめつつ捧げるオマージュ」と本人がいう通りの作品だった。

 それからこのCD、ぼくは大編成の音楽は個が埋没するところが好きではないのだが、合唱団の全員の名前が記してある点がよいと思った。

【音盤的日々 479】関谷晋 指揮 晋友会合唱団 / 林光編曲 混声合唱による日本抒情歌曲集_e0006692_16230330.gif

# by pororompa | 2024-02-27 13:30 | 音盤的日々 | Comments(0)

semスキン用のアイコン01 【音盤的日々 478】ロジェー・ワグナー合唱団 / THE BEST OF ROGER WAGNER CHORALE semスキン用のアイコン02

  

2024年 02月 20日

【音盤的日々 478】ロジェー・ワグナー合唱団 / THE BEST OF ROGER WAGNER CHORALE_e0006692_15551020.jpg 春の兆しを感じて、ふとこういう歌が聴きたくなった。確かそんなCDがあったはずだと棚を探った。職場で校内放送を担当していた頃、かける音楽は私のコレクションでプログラムを組むことが多かった。趣味の押しつけではなく、学校の少ない予算以外でもいろいろな音楽に触れる機会を子どもたちに与えたいと思っていたからである。退職した後職場を訪ねたときに、放送室に置き忘れていたのを見つけ出したのがこの盤だった。

 疎いジャンルなのでロジェー・ワーグナーという人は詳しくは知らないが、アメリカの合唱団のようでフォスターを中心としたアメリカものを中心に聴かせてくれる。日本にも馴染み深い世界の民謡なども歌っていて親しみやすい。自然に引き込まれる。

 唱歌というよりももっと広い範囲を含むこういう世界の歌を、幸い子どもの頃から親しんできた。ラジオもあるがそれより、ぼろぼろになった小さな歌集を兄が持っていて、それをいつもリコーダーで吹いていたからである。テレビのない家庭であったから、幼い魂にいっそう濃厚に刷り込まれていった歌の数々であったと思う。

 孫がこの世にやってきたので、孫の世代にもこういうスタンダードな歌を伝えたいと思うが、意外にこういうジャンルは気軽に聴いて親しむ程よい盤が少ない。この盤はどれもいい曲ばかりのフォスターだけでなく、「アニー・ローリー」や「春の日の花と輝く」、「ダニー・ボーイ」などヨーロッパものも選曲がよかった。夕暮れにこういう歌がしっとりと流れるような、そんな環境で育ててやりたいものだ。
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# by pororompa | 2024-02-20 16:53 | 音盤的日々 | Comments(0)

semスキン用のアイコン01 【音盤的日々 477】KENNY DORHAM / MATADOR semスキン用のアイコン02

  

2024年 01月 31日

【音盤的日々 477】KENNY DORHAM / MATADOR_e0006692_14181350.jpg 近年になって買ったLPの棚の中を探ってみる。やはり昔買ったものほどの愛着がないのか、こんなの買っていたんだというようなものもある。まあ仕方がない。うっかりダブって買うのだけは気を付けたい。

 ケニー・ドーハムのこの「マタドール」は、5年ほど前に通販で買ったものだった。今日はスタンダードが並んだB面から聴いてみる。

 1曲目チャップリンの「スマイル」。意表を突いて速めのテンポで始まった。2曲目の「ビューティフル・ラヴ」は逆に落ち着いている。この流れはいいね。けたたましさのないドーハムのラッパがスムーズにソロを紡ぎ、そして入ってくるちょっと音程が不安定なアルト・サックス。ジャッキー・マクリーンかなと思ったらそうだった。軽く鳴き節という感じの哀調あるソロが続く。3曲目がちょっと異色で、ヴィラ・ロボスのギター曲をトランペットとラッパでじっくりとスローでやるという趣向だったが、流れを止めているようであまり面白いと思わなかった。4曲目は歌ものに戻って後味よく終わった。

 A面に裏返す。冒頭はドーハムの自作でタイトル曲の「マタドール」。ん…?、何か変だ。タイトルもラテンぽいし解説の岩波洋三氏も「ラテン・リズムを導入」と書いているけど、変拍子じゃないの?。1・2、1・2・3…5拍子じゃん。英文ライナーを見ると「writen in 4/5 time...」と書いてある。まさか岩波氏も気付かなかった訳じゃないだろうが…。でも曲の一番の大きな特徴を書かないということがあるかな。

 5拍子でもスムーズにスイングしているのはさすがジャズメン。裏のクラシックの導入といい、ドーハムさんもミュージシャンとしてやってみたかったのだろう。いつもスタンダード吹いてばっかりじゃ面白くないからね。続いてマクリーンが娘の名をタイトルにした曲が組曲風に続くが、これもかわいい曲じゃない。ジャズメンの書いた意欲的なオリジナルという感じ。

 全体にスタンダードと実験作を程よく取り混ぜた佳作という感じのアルバムでした。

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# by pororompa | 2024-01-31 15:16 | 音盤的日々 | Comments(0)

semスキン用のアイコン01 【音盤的日々476】森山威男カルテット~向井滋春 / ハッシャバイ semスキン用のアイコン02

  

2024年 01月 09日

【音盤的日々476】森山威男カルテット~向井滋春 / ハッシャバイ_e0006692_21282814.jpg ふらりと街に出て、LPを1枚見つけ、ちょっとうれしい気分で帰ってきた。この気分はひどく懐かしい気がした。久しく味わってない気分だ。若い頃はこうやって一枚一枚に喜びを感じて、大事に聴いてきたものだった。

 正月明けに何気なく立ち寄った地元のブックオフで、LPが売られていた。見覚えのあるジャズ盤が数十枚、どれも300円。二束三文で叩き売りされている哀れなLPの中にこれがあった。週末で一割引とかで頼みもしないのに297円になった。この値段なら盤質には期待できないが、少なくとも外面は小綺麗にして売られている。その中の一枚、懐かしい作品をぼくは小脇に抱えて店を出た。その時、何とも言えない感情が甦ってきたのだった。

 森山威男のカルテットに向井滋春の加わったこの「ハッシャバイ」は、学生時代に入り浸っていた名古屋のジャズ喫茶「尾張屋」でよく流れていた。その頃の新譜だったようだ。この飛行機の翼のジャケットですぐ分かった。ピアノは板橋文夫。ちょうど偶然YouTubeで友部正人とやるのを見たところだった。

 案の定、盤面は汚れていたので、聴く前にまず水で洗った。1枚だから苦にはならない。失敗したって300円だ。そうして針を乗せると、針音の中から腹に来るような森山威男のバスドラの連打が飛び出してきた。

 1曲目「サンライズ」。10分余りの音の洪水がゆっくり懐かしさに浸ることを許してくれない。老化のテストのように襲いかかってくる。山下洋輔とやっていた森山はズドドド、ズドドドと怒濤の如く押し寄せ、コルトレーンを思わせる小田切一巳のテナーは辛口ながら聴き手を拒絶せずいい感じで鳴り渡る。さらに板橋が暴れ出す。その後の森山のドラムソロを楽しむにはさすがに体力が不足していた。

 2曲目表題曲の「ハッシャバイ」で、ちょっとほっとして椅子にかけ直す。哀調を含んだテーマは印象的で、彼らのオリジナルであるかのように記憶の底に染み付いていた。いい音のテナーは気持ちよさそうに吹き流して、ワン・ホーンのトラックを程よく締めくくった。

 次の日にあらためてB面を聴く。A面よりややおとなしいが、中では向井のワンホーンによるバラード「ラバー・マン」が特にいい。ぐっとくる。向井の「ラバー・マン」は何の演奏だったか若い頃いいなあと思った記憶があるのだが、この演奏だったのだろうか。

 LPは十分に鑑賞に耐える音で最後まで鳴り切った。ここ数年メルカリでCDを1枚ずつ買ってきたがちょっと行き詰まってきている。この田舎町でもできるというなら、古いLPを一枚ずつ買ってくるのに方向を切り替えようかなと思った。原点に戻って。

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# by pororompa | 2024-01-09 18:00 | 音盤的日々 | Comments(0)

semスキン用のアイコン01 【音盤的日々475】SONNY CLARK / COOL STRUTTIN' semスキン用のアイコン02

  

2023年 12月 13日

【音盤的日々475】SONNY CLARK / COOL STRUTTIN\'_e0006692_13593632.jpg 今日も重苦しい冬の曇天日だ。あまり食欲はないがそばでも食っておかないと夜まで持たんなとか思い、そばをかき込んだ。なんか今一つうまくないなと思った。食い終わって汁も捨ててから気が付いた。具に乗せるはずだったかきあげを忘れていた。何か悲しい。汁を作り直して浸して囓った。ちっともうまくない。侘しい午後だ。

 ブルーノートの創始者アルフレッド・ライオンさんのインタビューをふと手に取ったら、面白くてつい読み耽った。ぼくは長くジャズを聴いてきたのに、人が言うほどブルーノートに親しみを持ってない。かと言って拒否感があるわけではない。一通り聴いてきたし、持ってもいる。ジャズのレーベルで一番好きなのはRIVERSIDEかな。でもブルーノートは凄いなとは思う。

 例によって小川隆夫さんのインタビューでライオンさんの苦労話を聞いた。この人もヨーロッパの人なんだな。ドイツで迫害されたユダヤの人だった。ジョン・ハモンドとのひょんなやりとりからジャズメンの録音をすることになり、自分で聴くだけのつもりが評判になっていつのまにかレコード会社に発展した話、初期のモンクをいいと思って録音したがあまり売れなかった話など進んで、モンクの勧めでバド・パウエルを録ったのがあの有名な「アメイジング・バド・パウエル」だそうな。

 ジャケットも評判になったソニー・クラークの「クール・ストラッティン」の話も出てきたので、大きな音で久しぶりにこれをかけて聴いた。昔これを好んでいた妻に「安易セッション」とつまらんことを言って気分を害させたことを思い出した。ジャズは安易なセッションが名演、名盤を生んだりするものだ。演奏は今聴き直しても素晴らしい。有名な表題曲で始まるA面ばかり聴きがちだが、LPではB面に当たる3,4曲目もよかった。ビートが弾けて、侘しい冬の日に活が入った。
【音盤的日々475】SONNY CLARK / COOL STRUTTIN\'_e0006692_14322799.gif

# by pororompa | 2023-12-13 14:36 | 音盤的日々 | Comments(0)